CRM50のページ
ホンダ CRM50 初期型
娘がバイクにも乗ってみたいと言うので、探してきた中古車です。
今時、手動ミッションの50ccスポーツ車はほぼ絶滅してしまっており、中古車を探さないと入手が難しい状況です。
1990年頃の製造と思われる太古車(ポンコツ)です。
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左側
この個体は、何台かを寄せ集めて組み直してあるように思われます。
リアタイヤは、モトクロスタイプが組み付けてありました。
エンジンは、ピストン・リードバルブ式の2サイクルです。
バランサーが組み込まれており、振動は少ないです。
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右側
チャンバー、サイレンサーを耐熱塗料で再塗装しました。
キャリヤもガンメタリックで再塗装しました。
フレームはタッチアップで・・・
エンジンのシリンダと、ホイルのスポークは、再塗装してあるようですが、へたくそです。
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■エンジンは、基本的にはNSR50と同じらしいですが、オフロード車用にチューニングしてあるらしく、低速で粘ります。
その代わり、高回転では伸びがありません。
これは、チャンバーの影響が大きいように思います。
このチャンバーは、反射コーンが二個入っているらしく、共鳴点を広げて低速トルクをふくらませる設定のようです。
その代わり、ピーク時の共鳴は、Qが低くなってしまうため、大きな出力は出ません。
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■うんちく・・・2サイクルエンジンの排気管
2サイクルエンジンは、構造上の問題から、掃気ガスの吹き抜けが多く燃料が十分に出力に変換されません。
この対策として、排気管を笛のように共鳴するようにして、吹き抜けた掃気ガスをシリンダに押し戻す工夫がされています。
このような排気管をチャンバーと言います。
エンジンの掃気と排気のタイミング時間と、チャンバーの音響的な反射位置、排気ガスの温度で、どの回転で共鳴するかが決まります。
共鳴のQ(共振尖鋭度)の設定で、ワイドバンドでそこそこの出力か、ピンポイントの高出力かが決まります。
チャンバーが有効に機能していると、笛のような安定した音がします。
2サイクルエンジンの回転当たりの燃焼回数は、4サイクルエンジンの2倍ありますが、構造的な制約から2倍の出力には届きません。
この構造的な制約を打ち破ったのがロータリーエンジンです。
ロータリーエンジンは、2サイクルエンジンの一種で、同じ排気量なら4サイクルエンジンの2倍の出力です。
ディーゼルエンジンの2サイクルは、排気口が閉じてから燃料を供給するため、掃気ガスの吹き抜けは空気のみで燃料は無駄にならないので、実用性が高く広く使われています。
同一出力なら、2サイクルエンジンは小型軽量です。
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点火装置は、社外品のCDIが組み付けてありました。
このCDI実装により、リミッタは外れます。
アッパーフレームは、オイルタンクを兼ねており、省スペースとなっています。
2サイクルエンジンは、プラグが汚れやすいため、CDI点火が適しています。
写真に見える、スロットル・ワイヤは、この部分から二股となって、キャブレターと、オイルポンプに接続されています。
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このバイクはバッテリーレス仕様で、バッテリーは搭載しておらず、代わりに大容量のコンデンサを実装しています。
発電機に工夫があって、点火用と補機用の二系統の発電機を実装しているようです。
点火用の発電機は、始動時のキックのみで点火に必要な電力を発電します。
(このため、長期保管でもバッテリ上がりの心配はありません)
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購入時のメーターバイザ
メーター回りはかなりボロボロです。
転倒で破損したところを応急修理した感じがします。
なお、スピードメーターは、CRM80のが組み付けてありました。
メーターは割れたのを無理矢理取り付けてあるようです。
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修理後のメーターバイザ
割れていたメーターバイザと、ウインカーステーを交換し、スピードメーターの割れた所を修理しました。
メーターの樹脂は内側の白色の部分は、溶剤で溶けない樹脂だったので、エポキシ接着剤を使い、外側の黒い樹脂は、ABSらしいので、アクリサンデーで補修しました。
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購入時に組み付けられていたプラグ
標準的な形状で、熱価は8番でした。
明らかにくすぶった状態なので、
熱価を下げることにしました。
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パワーフライト・イグナイター
・ ・・もう製造されていませんが、側方電極を多数付けたタイプのプラグです。
2ストロークエンジンに最適なので、CRM50に使うことにしました。
熱価は6番ですが、このプラグはワイドレンジなので、7番相当と予想されます。
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側方電極を増やしたプラグは、着火性は月並みですが、要求電圧が低めで汚れに強く、くすぶってしまっても何とか着火するため失火しにくい特徴があり、濃いめの混合気に向きます。
(電極がたくさんあるので、どれかの正常ルートでスパークが飛ぶ)
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■カスタマイズ
アイドリングになると、ウインカーの点滅が止まってしまうので、ストップランプをLEDに交換しました。
これでアイドリングでも、ウインカーが正常に動作するようになりました。
元々の白熱電球と互換のLEDが市販されています。
■トラブル
オイルタンクのレベル警告センサからオイルが漏れ出しました。
経年劣化のようなので、センサユニットを交換しました。
■うんちく・・・エンジンのバランサーについて
CRM50のエンジンにはバランサーが組み込まれています。
ピストンエンジンは、ピストンの往復運動時の重量バランスを取るために、クランクシャフトにカウンターウェイトが付けてあります。
このおもりにより、ピストンの重量はスタティックにはバランスされます。
所が、ピストンは往復運動ですが、カウンターウェイトは回転運動なので、ピストンとは直角の方向に振動が出てしまいます。
単気筒エンジンの場合はこれを打ち消すために、別のおもりを追加して、ピストンと直角方向に揺すってやると、振動が相殺されます。
(CRM50のバランサーはこういった仕掛けです)
シリンダが二本あれば、水平対向構造か、90度V型構造をとれば、カウンターウェイトの振動は相殺できます。
シリンダが4本あれば、一列に並べた構造でも、原理的には振動は発生しません。
実際のエンジンでは、直列4気筒でも振動がありますが、これは回転バランスの製造誤差や、クランクケースの剛性不足によるたわみ、トルク変動によるクランクの回転ムラなどが原因だと思われます。
(負荷が重くなった時に強まる振動は、トルク変動による回転ムラが主因です)
エンジンの振動が大きくなると、乗り心地だけではなく、エンジンそのものが壊れてしまう事があるので、振動の軽減は重要なテーマとなっています。